※神余くんの世界史あいらんど…河合塾世界史講師「神余秀樹」先生(吉崎の恩師)の“ちょっとdeepな”世界史をご紹介します。
★恩師の訃報
4月22日、その日の河合塾横浜校での授業は、僕にとってのささやかな“弔い合戦”でした。
その朝、高校時代の同窓生のLINEページ。岡山の地元紙の訃報欄に「横山彰人(81)」が載ったという。
岡山県立倉敷南高校での僕のクラスの世界史の先生で、その後も縁があった。
退職後も岡山の予備校で教壇に立たれていた。
一昨年の同窓会で久々にお会いした際、ガンとの闘病中であるとの話をされていたが、今年の年賀状では、コロナ収束とオリンピック開催を願いながら「何とかまずまずの体調です」とあっただけに、とにかく驚いた。
即座に弔電を打ち横浜に向かった。
その夜、奥様から直々にお礼のお電話を頂いた。最期の御様子の話に涙。
同じ世界史屋として痛いほどわかるのは、御自宅の押入れを書棚に改造しても、なお収まらない本の数々の話。御家族からは「全部読んだの?」との冷やかされたのも、よくわかる。世界の歴史となると書籍の量は無限に広がる。たとえ300ページのうちの1ページ・1行に、意味があるという場合も含め。まさに「汗牛充棟」の模様。
それらのすべてを先だって岡山市内の古書店で処分したという。
その直後の御逝去らしい。
「これで自分の役割は終わった」という想いがあったのかも知れない。
横山師の遺したものにそのHPがあります。
http://www3.kct.ne.jp/~atonoyota/index.html
先生の生真面目な性格を示す本格派の仕事です。
10数年前、これを見た某出版社から「本にしないか」との出版依頼が来たそうです。ところが横山師は「自分はもう歳だから」と、東京で予備校講師をやっている教え子の神余にその話を譲ろうとして直々のお手紙を頂いたことがあった。(出版側の関心はあくまで横山師HPだったはずですが。)
実は、拙著『パノラマ世界史(下)』(2015)の末尾の奥付に、
「地図と年表に凝縮される世界史の俯瞰図は先生の御指導を通じて学び、それが今も筆者の仕事の基盤である」旨を述べ、横山彰人先生への御礼を入れました。
奥様のお話では、書籍類すべて処分ののちも、拙著と手紙の拙文だけは残してくれていたとのこと。
合掌。
※余談。これまた10数年前、河合出版の部屋で講師数名での共著問題集の校正作業中、旧ユーゴ関係の事実確認で、どうしても細部のウラが取れないことがあり、ネット検索などを繰り返していて、「あ、これこれ!」で解決した一件。僕には以前から見覚えのある書式。横山師のHPだった。「あ、これ俺の高校の先生だわ。」とプチ自慢でした。
〈神余秀樹先生プロフィール〉
1959年、愛媛県に生まれる。広島大学文学部史学科卒。民間企業勤務などを経て受験屋業界の“情報職人”となる。あふれる情報の山に隠れた“底の堅い動き”。“離れて見ればよく見える”。さらに“常識から疑え”。そんな点も世界史のすごみかと思う。
目標は「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」。学校法人河合塾世界史講師。
【著書】
『神余のパノラマ世界史(上・下)』(学研プラス、2010初版・2015改訂版)
『世界史×文化史集中講義12』(旺文社、2009)
『超基礎・神余秀樹の世界史教室』(旺文社、2018)