402.「★復活版・世界史魔界倶楽部――――これ、知ってりゃ偉いのかよ?」

※神余くんの世界史あいらんど…河合塾世界史講師「神余秀樹」先生(吉崎の恩師)の“ちょっとdeepな”世界史をご紹介します。

復活版・世界史魔界倶楽部――――これ、知ってりゃ偉いのかよ?

 

近年の入試ではぐっと減少した感もある難問・奇問・珍問・愚問。今のマジメな受験生には全く無意味な過去問の数々。受験世界史が、魑魅魍魎・百鬼夜行の伏魔殿だった頃の、極悪非道な入試問題集、です。(歴史の記録として一部復刻してみます。)

※なお、☆は選択肢、★は記述問題を示します。また、編集の都合上、語句を一部修正した場合があります。

 

[StageⅠ]世界史カルトの挑戦状。いくつできます?

 

[]★(英仏)百年戦争最初の戦いは(  )の海戦であった。(学習院大・文2001)

→答:スロイスの海戦

 

[]★フランス革命期、バルナーヴとともに、ドフィルネ州で三部会を開催し、全国各地にこれに倣うことを勧める回状を発送した名義人は誰か。(明治学院大・法・文2001)

→答:ラモワニヨン

 

[]☆ポトシ銀山の銀は( 1 )の水銀で精錬され…、( 2 )からセビリアへ向けて送られた。(慶応大・商2005)

→答:1・ワンカベリカ、2・ハバナ

 

[]★塩鉄専売を実施した中心人物は?その彼を殺したのは誰か?(青学大・経96)

→答:桑弘羊、霍光

 

[]★(中国・南北朝期の)混乱と戦乱の中、惨憺たる流浪の旅を続け、有名な子孫への訓戒書を著した貴族は誰か。また、その書名は何か。(青学大・経2000)

→答:顔之推『顔氏家訓』※北方民族の乱入のなか混乱する言語と文字のあり方も論じる。子孫に、唐代の書家・顔真卿も。

 

 

[StageⅡ]めざすはオタクの登竜門?

 

[]☆ウォーターゲート事件をスクープした新聞社は?(慶応大・法2003)

→答:ワシントン・ポスト ※映画『大統領の陰謀』では、若き敏腕記者ボブ・ウッドワードらの活躍、気骨の女社主キャサリン・グラハムの英断が描かれる。謎の情報提供者“ディープ・スロート”はのちに本人が名乗り出たことも話題に。


[]★『オリエント急行殺人事件』などで知られる”ミステリーの女王”は?(慶応大・文03)

→答:アガサ=クリスティ(僕は、ポワロ好きでしたが。)

 

[]☆小説『風とともに去りぬ』の作者は?(上智大・法05)

→答:マーガレット=ミッチェル

[]☆ハリウッド映画『風とともに去りぬ』が初上映されたときの大統領は?(慶応大・商97)

→答:F.ローズヴェルト

 

[]☆イギリスによる支配の影響でインドに普及し、現在のインドが世界有数の強豪であるスポーツとは何か。(上智大・外・法2004)

→答:クリケット

 

[]☆(古代ローマ期の石像彫刻の顔写真5枚を並べて)どれがどの皇帝の顔か?……(あわせて、ローマ市のシティ・マップの地図問題も)(上智大・法・文2000)

→答:……。「トンデモ悪問だ」と、某高校の先生が朝日新聞に怒りの投書をしていたのを見た覚えがあります。 ※今は、上智大・世界史も本格的な論述になりましたが。

 

 

[StageⅢ]難問・奇問・愚問にも、されど“品格”ありやなしや?

 

[]★ 1920年代のアメリカ・マフィアに関して、”暗黒街の帝王”と呼ばれ、シカゴの政治も牛耳った人物とは誰か?(立命館大・経営99)

→答:アル=カポネ

[]☆18世紀フランスの頽廃的空気のなか、サド公爵の[  ]が広く読まれた。(上智大・文96)

→答:『悪徳の栄え』

 

[]★第二次世界大戦中、アメリカ合衆国で新しい技術の開発が始められた。1980年代になると、この技術に基づいてインターネットなどを利用した新しい出版の形態が生み出された。この技術の名称を記せ。(東大2004)

→答:コンピューター ※あ、これはフツーの問題でした。

 

[]★19世紀末から20世紀初頭にかけて、イタリアから多くの移民を受け入れ、『母を訪ねて三千里』(アミーチス著)の舞台となった国はどこか?(中央大・文2005)

→答:アルゼンチン ※当時は「奇問」との声もあったが、今や頻出の移民史では重要な話です。

 

[]☆「東は東、西は西」とは誰の言葉か?(上智大・外2000)

→答:キップリング ※東洋・西洋の和解の困難を示した有名な言葉。(ひょっとして2020年代にこそ現実味を帯びる言葉?)

 

[]★台湾総督府の民政局長[  ]のもと土地調査事業が行われた。(慶応大・商96)

→答:後藤新平 ※台湾の衛生面の整備などで疫病を克服(→本HP「感染症の歴史3」参照)。のち初代満鉄総裁。関東大震災後の東京都市計画のプランナーにも。

 

 

[StageⅣ]もはや論評は、いたしません。

 

[]☆唐宋八大家の一人で「太常因革礼」を編集した人は誰か。(早大・教育98)

→答:蘇洵

 

[]☆中米・カリブ海で、合衆国資本が、ある農産物の独占的な生産・輸出を目ざして築いた有名な「帝国」は、次のうち何と呼ばれたか?

小麦帝国、 タバコ帝国、 コーヒー帝国、 バナナ帝国、 綿花帝国 (青学大・文2003)

→答:バナナ帝国 ※ユナイテッド・フルーツ社などが典型。

 

[]☆オサマ=ビンラーディンの母はどこの人か(青学大・文2002)

→答:パレスチナ

 

[]★1920~30年代の上海で書店を経営しており、魯迅と親交が深かったことでも知られる日本人は誰か?(中央大・法2003)

→答:内山完造 ※内山書店は今も神保町のすずらん通りにありますね。

 

[]★「山もある。川もある。人もいる。アメリカに勝ったら築きあげよう。今の10倍も美しく」で始まる遺書を残して1969年に亡くなったある国の指導者はだれか?(早大・政経98)

→答:ホー=チ=ミン ※これを出題した政経学部も今は世界史入試をやめました。さて、これからは?


〈神余秀樹先生プロフィール〉

 1959年、愛媛県に生まれる。広島大学文学部史学科卒。民間企業勤務などを経て受験屋業界の“情報職人”となる。あふれる情報の山に隠れた“底の堅い動き”。“離れて見ればよく見える”。さらに“常識から疑え”。そんな点も世界史のすごみかと思う。

 目標は「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」。学校法人河合塾世界史講師。

【著書】

『神余のパノラマ世界史(上・下)』(学研プラス、2010初版・2015改訂版)

『世界史×文化史集中講義12』(旺文社、2009)

『超基礎・神余秀樹の世界史教室』(旺文社、2018)